今回ご紹介するのは、愛知県春日井市で地域密着の不動産売却を手がける「株式会社 神領不動産様」です。空き家・空き地や相続した実家の売却を中心に、創業50年にわたって地元の売主に寄り添ってきた一社です。
近年、不動産会社向けにはAI査定、一括査定サイト、登記情報を活用した相続DMなど、さまざまなツールが次々と登場しています。ただ、導入したものの売主集客につながらないという声は、全国の小規模不動産会社で少なくありません。
そうしたなか同社は、売主に向けたホームページを軸に集客を組み立て、一括査定サイトに頼らない形で、成約につながりやすい問い合わせを得てきました。一括査定サイトの媒介獲得率は業界平均で5%程度とされますが、同社ではホームページ経由で、それを大きく上回る確度の相談が寄せられています。さらにホームページは、金融機関や同業者からの信用獲得という思わぬ効果ももたらしました。
本記事では、同社代表 高木いおり氏に、地方の小規模不動産会社がツールに振り回されず、自社に合った売主集客をどう築いていくかについて詳しく伺いました。
▼本インタビューは動画でもご覧いただけます
目次
会社概要と事業内容
話し手

株式会社 神領不動産 代表 高木 いおり氏
愛知県春日井市大留町に拠点を構え、勝川・春日井・神領・高蔵寺の各エリアを中心に、空き家・空き地や相続不動産の売却を手がける地域密着の不動産会社です。仲介売却から不動産買取まで、売却にまつわる相談に幅広く対応しています。
代表の高木いおり氏は、1964年に春日井市で生まれ育ち、看護師を経て不動産業へと進みました。宅地建物取引士に加えて空き家マイスターの資格を持ち、愛知県宅地建物取引業協会(北尾張支部)の役員や、春日井市主催の空き家相談会の相談員としても活動しています。女性が相談しやすい雰囲気を大切にしながら、創業50年の同社を率いています。
▼株式会社 神領不動産 公式ホームページ
https://www.jinryoufudousan.co.jp/company/
AI査定は集客の武器ではなく「業務効率化の道具」という割り切り
不動産会社向けには、AI査定をはじめとするツールが次々と登場しています。御社では、AI査定をどのように位置づけていらっしゃいますか。
AI査定は導入していますが、営業ツールというより、業務を効率化するためのものという位置づけです。査定のご依頼をいただいたとき、初回面談のタイミングでAI査定にかけると、近隣の成約事例を拾って、おおよそ妥当な金額が出てきます。
ただ、その金額をそのまま使うわけではありません。少し高そうだ、低そうだと感じれば、私自身で修正します。結局のところ、私が査定書を書いているのと大きくは変わらない、という感覚です。AI査定で営業をどうにかしようとは考えていません。あくまで業務効率化の道具と捉えています。
AI査定をめぐっては、集客への期待が先行しやすい点に注意が必要です。AI査定を入れれば、ネット上に金額が出て問い合わせが来るのではないか、と期待される不動産会社は少なくありません。ただ、金額を出すこと自体がゴールになってしまっているケースも多く見られます。そもそも、一括査定サイトや査定シミュレーションが数多くあるなかで、一地域の会社のAI査定までたどり着く売主はわずかです。仮にたどり着いても、これまで経由してきた会社と同じ金額が出るため、相場の確認で終わり、反響にはつながりにくいのが実情です。業務効率化や、新人営業が査定書を作りやすくする目的であれば、AI査定は有力な選択肢の一つになります。

一括査定は「媒介獲得単価」と平均5%の現実 — 小規模会社が消耗しやすい構造
売主が一度は使うツールとして、一括査定サイトがあります。御社では、一括査定にどのように向き合っていますか。
今はほとんど取り組んでいません。割引期間があったときに試したことはありますが、自分には向いていないと感じました。1件あたり数万円の費用がかかるうえに、問い合わせをくださった方が当社に依頼されるとは限らないためです。
最近気づいたのは、私のところへ相談に来られる方は、皆さん一度は一括査定を使っているということです。つまり一括査定は、売りたい方や、今すぐではないけれど気になって入力した方が、「自分の物件はこれくらいか」と相場を知るためのツールになっているように思います。営業の入り口としては、なかなか機能しにくいのではないでしょうか。私はもともと、困っている方の相談に乗り、どう売却していくかを一緒に考えたいタイプなので、一括査定のスタイルとは少し違うと感じています。
費用の捉え方にも、注意したい点があります。一括査定を「1件1万5,000円だから、月10件で15万円ほど」と入り口の費用で捉える会社は少なくありません。しかし、1件の売り媒介を獲得するためにかかった費用、いわゆる獲得単価で見ると、30万円から40万円に達することもあります。仮に物件単価が800万円以下で、入る手数料が30万円ほどであれば、支出と利益がほぼ釣り合ってしまいます。一括査定の問い合わせから媒介に至る割合は、平均で5%程度といわれます。100件の問い合わせで5件、30件であれば1〜2件という水準です。
この数字について、高木氏はホームページ経由との違いをこう語ります。
私の場合は、ホームページからの問い合わせがとても多く、しかも成約につながりやすいと感じています。「私がどういう人間か」をホームページで伝えているので、一括査定とは確度がまるで違います。すべてが成約になるわけではありませんが、消耗の度合いが大きく異なります。

売主を集めるのは「人柄が伝わるホームページ」という発想への転換
一括査定に費用を投じる前に、まず取り組むとよいのはどのようなことでしょうか。
私は、ホームページ作りだと考えています。売りたい方を集めるためのホームページを用意した方が、結果的に良いと感じています。ブランディングテクノロジーさんの助言も受けながら、春日井市内の駅名を盛り込んだり、「地域のことはお任せください」という姿勢を前面に出したりしてきました。動画などで、実際に動いている人柄を見ていただくことも大切にしています。
ここには、多くの会社が陥りがちな思い込みがあります。
売主をネットで集めるなら一括査定サイトしかない、と思い込んでいる方は少なくありません。不動産会社には、物件情報はポータルサイト、査定の集客はイエウールなどの一括査定サイト、という「まずは大手の媒体に載せる」前提があります。ただ、地域密着で小さく営む会社が大手と同じ土俵で広告を投下し続ければ、資金が先に尽きてしまいます。一括査定サイトしかない、という前提から一度離れて、ほかの方法も視野に入れていただきたいと考えています。

ホームページは金融機関・同業者からの信用も生む「資産」になる
ホームページがもたらした効果のなかで、特に大きかったものを教えてください。
良かったと感じていることが、二つあります。
一つは、同業者からの信用です。地方の業者さんが、私の出している物件を買いたいと考えたとき、「どういう不動産屋なのか」を必ず確かめます。そのときにホームページを見て、会社としてしっかりしていると受け止めてもらえる。「高木さんなら任せられる」と、買付を入れていただけることがあります。
もう一つは、金融機関からの評価です。ホームページの印象が良かったことで、転売向けの買取物件を仕入れる際の資金を、プロジェクトごとに融資していただけるようになりました。これは経営の面で大きな後押しになっています。
ホームページ制作のご相談をいただくこともあり、作ってから5年ほどでじわじわと浸透してきた手応えがあります。良いホームページは、私にとって一つの資産になっていると感じています。

相続DM・登記情報のビッグデータ施策が「大手の後追い」になりやすい理由
登記情報を活用して相続物件の所有者にDMを送るサービスも増えています。このような手法について、どうご覧になっていますか。
この手法は、近いうちに使いにくくなると見ています。法務局には多くの苦情が寄せられているようで、実際に制度改正も進んでいます。2026年10月に施行される不動産登記規則の改正により、登記の受付帳から「登記の目的」や「不動産の所在事項」といった記載が削除され、これを手がかりにした営業は難しくなる見込みです。
2026年10月施行の不動産登記規則改正について|楽待
https://www.rakumachi.jp/news/column/388434
そもそも、相続登記が終わっているということは、相続そのものは一段落しているということです。登記後に大量のDMが届くことに、不快感を持つ方も少なくありません。私の知人も、相続後にポストに入りきらないほどのDMが届き、「個人情報保護といわれているのに、なぜ相続したことが分かるのか」と強く憤っていました。当社のような不動産会社にも「お持ちのマンションを売りませんか」というDMが届くことがあり、社名すら確認せずに送っている様子がうかがえます。
こうした施策には、構造的な問題もあります。
一括査定も相続DMも、突き詰めれば大手の後追いになりがちです。毎月数千万円規模の広告費を投じられる大手と同じ手法を、そのまま小規模会社がなぞっているケースが目立ちます。相続や実家の売却は、多くの方にとって人生で一度か二度の出来事です。名前を知らない会社からチラシが届いても、すぐに相談しようとはなりにくいものです。お客様が何を見て会社を選んでいるのかを踏まえたうえで、戦略を立てることが望ましいと考えています。

小規模不動産会社に必要なのは「戦術」より「戦略」 — ランチェスター的発想
ここまでのお話を踏まえると、地方の小規模不動産会社は、何を軸に考えるとよいのでしょうか。
施策全体の位置づけを整理すると、次のように見えてきます。
AI査定、一括査定、相続DMといった手法は、基本的に資金力のある大手向けの施策という側面があります。地方の小規模不動産会社であれば、中小ならではのやり方を選ぶ方が理にかなっています。いわゆるランチェスター戦略の考え方です。ただ、ランチェスター戦略を知っている方でも、つい戦術に頼ってしまいがちです。思考や考え方があり、その上に戦略があり、さらにその先に戦術がある。多くの方が、すぐ結果の出やすい戦術に飛びついてしまうのです。だからこそ、他社がうまくいった手法を真似てもうまくいかない、という事態が起きます。周りがやらないことに取り組む姿勢が欠かせません。
高木氏も、経営者としての実感を語ります。
小さな不動産会社にこそ、戦略とビジョンが大切だと考えています。戦略やビジョンは、すぐに結果が出るものではありません。一方で戦術は結果が見えやすいので、どうしてもそちらに向かいがちです。けれども、戦術にばかり資金を投じていくと、少しずつ先細りになり、いずれ手元の資金も尽きてしまいます。そうなる前に、信頼できる相手と一緒に戦略を立てておくことが望ましいと感じています。

地方の不動産会社が「選ばれ続ける」ために — 高木代表が伝えたいこと
最後に、地方で不動産業を続けていくうえで、これからも大切にしたいことを教えてください。
私は父の代から、この不動産業を受け継いできました。不動産業は、地方であってもどの地域であっても、欠かすことのできない仕事だと考えています。件数をこなすだけの仕事や、自社の都合を優先する仕事ではなく、誠実に取り組めば、その地域にとって欠かせない、お客様の資産を守る仕事になります。
だからこそ、同じ志を持つ方々に、自信を持って丁寧に仕事を続けていただきたいと思っています。私自身、ホームページは4社目でようやく納得できるものに巡り合うなど、これまで多くの遠回りをしてきました。その経験を経て、「これに取り組めば前に進める」と感じられるものを、これからお伝えしていきたいと考えています。
ブランディングテクノロジーさんに教わったノウハウは、まさに戦略そのものでした。「戦略」という言葉は、戦いを略すと書きます。無駄な動きをしないための考え方を、真剣に不動産業へ向き合いたい方に届け、仲間を増やしていけたらと願っています。

次は、あなたの街で「相続・空き家」に強い不動産会社になりませんか?
神領不動産様が実現した「人柄が伝わるホームページを起点にした高確度の問い合わせ」と「金融機関・同業者からの信用獲得」は、たまたまうまくいった事例ではありません。一括査定や相続DMのように大手と同じ土俵で戦うのではなく、相続・空き家という地域に深く根ざした領域へ絞り込み、人と会社の信頼を売主目線で伝えてきた——その積み重ねが、確度の差となって表れています。
「売却依頼が紹介や一括査定に偏って安定しない」「広告費がかさむわりに利益が残らない」「相続・空き家の元付をもっと獲得したい」。こうした課題に対して、私たちブランディングテクノロジーは、神領不動産様のV字回復モデルをほかの会社でも再現できる形に落とし込み、戦略の立案から実行(ホームページ・YouTube・書籍など信頼構築の取り組み)までを一括で支援しています。
本記事でご紹介した神領不動産様の取り組みは、その後「IORI(イオリ)」というサービスとしてパッケージ化されました。神領不動産様の事例では、社長1人で年商約1億円・粗利約5,000万円という水準に到達しています(同社の実績であり、すべての導入企業が同じ成果を再現できるものではありません)。地方の小規模不動産会社で「相続・空き家の領域に取り組みたい」「社長1人でも回る経営に切り替えたい」とお考えの方は、まず資料で具体的な支援内容をご確認いただければと思います。






